インプラントを長く使っていると、「最近少しぐらつく」「噛んだときに以前と違う感じがする」といった変化に気づくことがあります。こうした違和感がある場合、人工歯そのものだけでなく、その下で支えているアバットメントに原因がある可能性もあります。
アバットメントは、インプラント体と人工歯をつなぐ重要なパーツです。普段は目立たない部分ですが、毎日の食事や噛み合わせによる力を受け続けるため、長期間使用するなかで状態が変化することがあります。
では、アバットメントはどのようなときに交換する必要があるのでしょうか。すぐに交換が必要なケースばかりではないため、まずは症状や原因を確認することが大切です。
アバットメントに起こりやすい変化とは
インプラントのトラブルというと人工歯の欠けや破損を思い浮かべる方も多いですが、内部のパーツにも負担がかかっています。
特に注意したいのが、ネジの緩みです。毎日の食事や歯ぎしりなどによって繰り返し力が加わると、少しずつ固定部分に変化が起こることがあります。
最初は「少し噛みにくい」「人工歯が動くような気がする」といった小さな違和感だけの場合もあります。しかし、その状態を長く放置すると、ネジやアバットメントそのものに負担が集中する可能性があります。
一方で、違和感があったからといって、必ずしもアバットメントを交換するとは限りません。単純な緩みであれば、締め直しなどの処置で対応できる場合もあります。
アバットメントの交換が検討される主なケース
交換が必要になるかどうかは、歯科医院で状態を確認したうえで判断されます。
例えば、アバットメントにひびが入っている、変形している、ネジが破損しているといった場合には、新しい部品への交換が検討されます。
また、長年使用して人工歯を作り直す場合も、アバットメントの状態を確認する重要なタイミングです。人工歯だけを新しくしても、土台となる部分に問題があれば、その後の使用に影響する可能性があります。
さらに、歯茎の状態が変化して金属部分が見えるようになったケースでは、見た目を考慮して素材の変更が検討されることもあります。
特に前歯では、歯茎の位置が変わることで内部の金属色が目立つ場合があります。このような場合には、周囲になじみやすい素材を選択する方法もあります。
金属に対する反応が疑われる場合も、原因を確認したうえで素材変更が検討されることがあります。ただし、歯茎の赤みや腫れなどは、清掃状態や周囲の炎症、噛み合わせなど別の原因でも起こるため、自己判断は避けたほうがよいでしょう。
交換するときは何をする?
アバットメントの交換では、まず現在のインプラントの状態を確認します。
レントゲンなどを使用してインプラント体や周囲の骨の状態を調べるほか、歯茎の状態や噛み合わせも確認します。
また、使用されているインプラントのメーカーや部品の種類を確認することも重要です。インプラントはメーカーによって規格が異なるため、適合する部品を用意する必要があります。
以前とは別の歯科医院を受診する場合は、治療時の資料や診療情報があると確認がスムーズになることがあります。
状態の確認が終わると、必要に応じて人工歯を取り外し、アバットメントを交換します。
ネジの緩みだけであれば比較的簡単な処置で済むことがありますが、ネジが破損して内部に残っている場合などは、取り外すための追加処置が必要になることもあります。
新しいアバットメントを装着したあとは、人工歯を戻して噛み合わせを調整します。噛み合わせに偏りがあると、一部に強い力が集中する可能性があるため、装着後の調整も大切な工程です。
アバットメント交換の費用はどれくらい?
ここで気になるのが、実際にどの程度の費用がかかるのかという点でしょう。
アバットメントだけを交換する場合、費用の目安として1万円から5万円程度とされるケースがあります。ただし、使用する素材や部品の種類、歯科医院の料金設定などによって金額は変わります。
ネジの緩みを締め直すだけであれば、交換よりも費用を抑えられる場合があります。一方、破損したネジの除去など、追加の処置が必要になると費用が増える可能性があります。
人工歯も同時に作り直す場合は、さらに費用が大きくなることがあります。アバットメントと上部構造をまとめて対応する場合、10万円から30万円程度が一つの目安になります。
ただし、これはあくまで一般的な目安です。素材や治療内容によって金額は大きく変わるため、実際の費用については診察時に見積もりを確認することが大切です。
意外と見落としやすいのが保証制度
インプラント治療を受けた歯科医院によっては、一定期間の保証制度を設けている場合があります。
保証の対象になっていれば、修理や部品交換などの費用負担を抑えられる可能性があります。ただし、保証期間や対象となるトラブル、定期的なメンテナンスの条件などは歯科医院ごとに異なります。
そのため、インプラント治療を受けた際の保証書や説明書などは、できるだけ保管しておくと安心です。
また、引っ越しなどで別の歯科医院に相談する場合は、どのメーカーのインプラントを使用しているのか分かる資料があると役立ちます。
交換を防ぐために日頃からできること
アバットメントのトラブルを完全に防ぐことは難しいものの、日頃のケアによって負担を減らすことはできます。
まず意識したいのが、歯ぎしりや食いしばりです。無意識のうちに強い力がかかっている場合、インプラント周辺のパーツにも負担が加わります。
心当たりがある場合は、歯科医院に相談してみましょう。必要に応じて、就寝中の負担を抑えるための装置などが提案されることがあります。
食事の際には、極端に硬いものを強い力で噛み続けることもできるだけ避けたいところです。
そして、何より重要なのが定期的なメンテナンスです。自分では気づきにくいネジの緩みや噛み合わせの変化、周囲の状態などを確認してもらうことで、小さな変化を早めに見つけられる可能性があります。
「少し動く気がする」は放置しない
アバットメントのトラブルは、最初から大きな症状が出るとは限りません。
人工歯を舌で触ったときに動くような感じがする、噛んだときに違和感がある、以前より噛みにくくなったなど、わずかな変化として現れることもあります。
こうした変化がある場合、次回の定期検診まで待つのではなく、歯科医院に相談することが大切です。
早い段階で原因が分かれば、締め直しなど比較的簡単な対応で済む可能性があります。反対に、違和感を長期間放置すると、部品の破損などにつながるケースも考えられます。
アバットメント交換は、インプラントを長く快適に使用するための選択肢の一つです。交換が必要かどうかは、ネジの状態、部品の劣化、人工歯の状態、歯茎の変化などを総合的に確認して判断されます。
費用については、アバットメントのみなら1万円から5万円程度、人工歯も含めて作り直す場合は10万円から30万円程度が一つの目安ですが、実際の金額は治療内容によって異なります。
「ぐらついている気がする」「噛み合わせが変わった」「歯茎から金属部分が見えてきた」などの変化に気づいたら、自己判断で使い続けず、早めに歯科医院で状態を確認してもらうことが、結果的に時間や費用の負担を抑えることにもつながります。
